Plants Index Introduction


はじめに

 さて、Plants Indexのページをつくるにあたって、まずキホンといえるのが、産地と、原記載情報だ。”記載”とは、発見された植物に”名前”を与えるということだが、その際に当然記載論文というものが発表される。命名のオリジナルになる基準標本と、記載は、必ずセットだ。ふだん、私がそれらの情報をどうやって得ているのか、ここに書いていこうと思う。

まずはGlobal Plant

 Global Plantというサイトは、世界最大のデジタルハーバリウム(植物標本:腊葉標本)のデータベースで、TL(Type Locality;基準標本産地)や、さまざまな情報を簡潔に知ることができる。高解像度の植物標本の閲覧/ダウンロードは有料で(大学などの機関では利用できるかもしれません)、さても、それ以外の基本的な情報に関しては、無料で閲覧できるので十分だ。むしろ大事なのはLocalityなどの情報の方。植物標本の様子は左上のサムネイルの小さな画像で楽しむ程度で悪くない。

 ポイントアウトしておきたいのが、CountryLocalityの情報、これがまさに産地情報だ。試しにEuphorbia sepultaのページを検索してみる。CountryとLocalityをチェックしてみると、TLは、SomaliaのAl Madu range between Geldin and Sahaguri ということが分かった。こうやって、詳細な分布がわかると、その地域の気候を詳しく調べていくことができる。得体の知れない導入品や、栽培のハマらない難物は、時にこの原産地の情報に立ち返ると、大きなヒントが得られることが多い。日本で慣例的に行われる栽培方法で維持が難しい、弱い、難物だと言われる種類が、この原産地の気候を調べてみると、じつは全く逆の栽培をしていると判明することもしばしばだ。

さて、まずは産地という重要な情報を得られた。次にもう少し詳しく、その植物の特徴や、より詳しい周辺的な情報を知りたい。そうすると、次にアプローチするべきは原典、記載論文しかない。記載論文はそれ自体ロマンのあるものだから、折に触れて読んでいきたいものだ。

IPNIで原典に

そうすると次は、IPNIを訪ねてみよう。International Plants Name Indexというこのサイトは、原記載のデータベースサイトだ。(以前より随分みやすくなり、記載年月順に並び替えて表示できるようになったのは、本当にありがたいアップデートでした!)新種の登録がされると、基本的にこのサイトにも反映されていく。

 Euphorbia sepultaのページをみると、1976年に、Bally & CarterによってCactus and Succulent Journal (CSSA)に記載が発表されたことがわかった。バリーによる標本採集が1956年(Global Plantのデータの、Collection dateをチェック。)ということだから、発見から20年経ってから記載されたことになる。これで、原記載の所在が明らかになったわけだから、あとはその文献を手にいれるだけである。記載論文には、産地情報だけでなく、その発見にまつわる経緯や、植物の特徴のデスクリプション(記載)、写真、近縁種との差異比較などより深い情報が得られる。大抵は英語だが、中にはスペイン語やドイツ語など、地域のローカル雑誌に掲載されたものもある。その場合は残念だが一旦諦めて、話せる友人を頼ろう。


Global Plants,とIPNI、この2つのデータベースサイトがあれば、その植物に関する基本的な情報は得ることができるでしょう。

Field numberから辿る旅

そして、もう一つ紹介しておきたいのが、Cactus and Succulent Field Number(CSFN)というサイト。植物をやっているとField numberというものによく出会う。英語イニシャルに数字の組み合わせ、例えばPV2592…., LAV4567…,と。CSFNは、多肉植物のこれらのFNをまとめたデータベースなのだ。

 このサイトは、フィールドナンバーの一覧を表示することもできるし、植物名で検索することもできる。さて、検索してE. sepultaの記録を見てみると、BALLY11158というデータがみつかった。先のGlobal Plantsのセプルタのデータをみると、まさにこのナンバーの標本である。このBALLY11158の標本が基準標本になっているということだ。そう思ってみると、サムネイルの小さなウィンドウの標本も特別なものに思えてくる。少し調べてみるとAl Maduという地域は、ソマリア北部Cal Madow山脈東端部の地域のようだ。前後する一連のFNを見ていくと、どうやらセプルタはあのEuphorbia mitriformisと同じくして生えていることがわかって面白い。私の温室にはセプルタとミトリフォルミスの両方がある。しかし、これまではどちらもソマリア産ということは知っていたが、同産とは思っていなかった。もしAl Maduを訪れて、セプルタを見つけたなら、ミトリフォルミスも同様に期待できるということだ。自分の温室にあるこの植物とあの植物が、実は同じ場所に分布している..。これだけでも、温室の見え方が違ってくる。..ちょっと待て、その後バリー氏はさらにそこから西に移動していって、カルマドー山脈西端の都市Erigavo付近で、Euphorbia erigavensisも発見しているじゃないか。FNというのは、原産地で採取された植物にロカリティや様々な情報がタグ付けされている。こういった風に、一連の記録から、レジェンドたちの旅の道程を追体験することもできるのである。FN5桁台に突入した猛者P.R.O.Bally氏、彼のナンバーを追っていくとこれが興味深いが、これはまた別の場所で。



これらのサイトは、いずれも無料でとても有用です。
The succulentistではいつでも飛べるように、各サイトへのリンクバーを配置しておきました。ご利用ください。

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