Story of the 6 6 POT
原産地では小さな岩の亀裂や割れ目に溜まった、わずかな土だけで育っている様子がよく見られる。ほんのスプーン一杯のような土で、汚くもならず、縮み上がるのでもなく、艶やかに色鮮やかに、塊根、塊茎を張り巡らして立派な群生姿を作りあげていたりする。そんな自然の不思議に迫りたい一心で、“少ない土の量で”育ててみるという試みに使い始めたのが66potだった。その中で66potを含めよりも小さなサイズの鉢も様々に試してみたが、やはり鉢があまりに小さすぎてしまうと、水のやり加減など操縦がシビアで栽培が難しくなってくる。そうした塩梅をみながらテストしてきて、いよいよ66potという鉢のサイズ感というものが、植物を健康に維持しながら安定して栽培できる、最小限の土量だということに至ったのだった。そして、66potを使うにつれ、ある種の快感に気づいた。人の性とでもいうのか、ぴっちりと敷き詰める快感性というものが確かにある。簡単にいえば、場所に無駄がないのだ。
昔とちがって温室をたっぷりかまえてるということは難しくなって来ている。むしろ都会でのど真ん中、ベランダやバルコニー、屋上や中庭の一角で棚を揃えて多肉植物を育てている人がほとんどだろう。アーバンサイドでこそ、植物を愛で、街で、都会で育てるからこそ、良いというものだが、やはりというべきかいつも限られた場所を気にしながら、新しい種類を集め、よりよい場所、十分な太陽光と良き風を求めて自身の栽培場を築き上げて行く。”限られた場所”で、次へ次へと多くの種類を集めて行く。実生などしようものなら、いつまでも鉢上げできないトレーが増えて行く。そんなわけで、我々は鉢の置き場においてミニマリストを志向せざるをえない。なんとか限られた面積で、できる限り多くの種を楽しむため、最大限に鉢数を置けるようにしたいと思うものだ。
66potという呼称(Roku-Roku pot)は、<6cm×6cm>というそのサイズから来ている。66potならば、例えばたたみ1枚(1畳: 180cm*90cm)に、なんと500鉢(!)近くも並べることができる計算だ。例えば、コノフィツムの種数がだいたい600種というところだから、2畳あれば全種をコンプリートして並べることもできるような数というわけだ。日本は、欧米とは違って、角鉢がスタンダードではない。プラ鉢のほとんどは丸であるし、角鉢があったとしても(余計な!)装飾的なものが多い。欧米では普通に見られるような、植物を引き立てる黒子に徹したような、ミニマルデザインな角鉢というものは、実際なかなかないのである。それに66potは持った時にも十分な硬さがあることも素晴らしい。単体でも十分な硬さだが、特に気を使いたいものには、さらに2重3重に重ねて用いればいい。
Surface Sandをお求めいただいた方々は、すでに66potにお馴染み、お楽しみの方も多いかと思います。Habitat seriesとの相性という意味で、従来の丸鉢ではどうしてもま抜けた感じがしてしまう。Habitat Seriesと角鉢の相性は皆が認めるところでしょう。やはり一切の意匠を排したデザイン、鉢縁の主張のなさが、より心地よくHabitatへのイメージを膨らませてくれるのでしょう。
-Fin-